本論文を紹介するにあたって

近年、社会全体で性的マイノリティへの理解が求められる中、医療現場でもこのテーマへの関心が高まっています。LunaのサービスのメインであるSM性癖も、“LGBTQ+”の+に含まれるkinkyという性的マイノリティにあたります。
そこで、医療現場が性的マイノリティへの理解をどれだけしてくれているのか・しようと努めているのかを知ることで、SM好きの皆さんが医療機関を受診するハードルを下げたり、実際に受診した際の現実を知ることができるのではと思います。
今回は、2014年の青木昭子氏らの論文*「性的マイノリティについての講義を受けて医学科1年生が学んだこと: 感想カードを用いた質的研究」から、医学を学ぶ学生たちが性的マイノリティ(今回、取り上げられているのは同性愛)に対してどのようにして学び、どのように向き合っているのかを紹介します。
(*青木昭子, 榊原秀也, 長嶋洋治, 星野慎二, 向原圭, & 後藤英司. (2014). 性的マイノリティについての講義を受けて医学科 1 年生が学んだこと: 感想カードを用いた質的研究. 医学教育, 45(5), 357-362.)
論文の全体像
研究目的
医学部の学生が性的マイノリティについてどのような態度を持ち、当事者の語りから何を学ぶかを検討すること。
研究方法
横浜国立大学医学部医学科の1年生87名が性的マイノリティについての講義を受け、授業後に提出された感想カードの内容から、性的マイノリティに対する医学部生の反応を分析した。
結果
多くの学生が性的マイノリティは稀ではないことに驚き、自分自身や社会における偏見や差別をなくすための知識の重要性に言及していた。
研究目的:医学教育における「性的マイノリティ」講義の意義
この研究は、医学部1年生を対象にした「性的マイノリティ」に関する講義の効果を分析したものです。性的マイノリティの高校生の話を聞いた学生たちが提出した「感想カード」の言説を質的に分析することで、彼ら・彼女らがどのような学びを得たのかを明らかにしています。
研究の背景には、医療者が性的マイノリティの患者に適切に対応するためには、医学的知識だけでなく、当事者の立場を理解し、多様性を尊重する姿勢が不可欠であるという考えがあるようです。そのため、医学部の早い段階からこのテーマを学ぶことは、将来の医療実践において非常に重要だと筆者は考えているようです。
研究の背景
性的マイノリティは人口の数%存在し、医療者が必ず出会う可能性があります。しかし、従来の日本の医学教育では性的マイノリティに関する教育は必須項目として扱われておらず、学生の知識や理解は不十分だと筆者らは考えていました。そこで著者らは、医学科1年生向けの授業で「性的マイノリティ」について取り上げ、その教育的効果を検証しました。
研究方法:性的マイノリティのカミングアウトに対する反応の分析
2012年7月、横浜市立大学の医学部1 年生を対象とした医学入門講座にてSM*支援団体代表者がゲスト講義し、同性愛をカミングアウトした高校生の語り(DVD 動画)を流し、性的マイノリティに対する偏見や社会の反応について話をしました。(*注:SM=Sexual Minority)
受講したのは医学科・看護学科の1年生など計198名。授業後に提出された感想カードの内、医学科1年生87名分の感想カードの内容を質的研究手法(SCAT:Steps for Coding and Theorization)を用いてセグメント化し、カテゴリー化を行いました。
学生の反応:「驚いた」「知らなかった」「意識が変わった」

感想カードの分析から、学生たちの反応には大きく分けて以下のような傾向が見られました*。
① 初めて知ることが多かった
「LGBTQ+」や「性的マイノリティ」という言葉自体は聞いたことがあっても、実際の生活や困難については詳しく知らなかったという声が多く見られました。特に、性的マイノリティは稀ではないことに驚きを感じた学生も多かったようです。
② 偏見や誤解に気づいた
「これまで自分が無意識のうちに偏見を持っていたことに気づいた」という内容の意見も複数ありました。そして、「性的マイノリティ=特殊な存在」といった先入観や、「医療では性的指向はあまり関係ないのでは?」という考えが講義を通じて変わったそうです。
③ 医療者としての姿勢を考えさせられた
一部の学生は、医師としてどのように患者と向き合うべきかを考えるきっかけになった旨を述べています。特に、患者が安心して自身の性的指向や性自認を話せる環境を作ることの重要性を学んだという声が印象的でした。
*注:感想カードの内容の分析では、
カテゴリ1:性的マイノリティが稀ではないことに対する驚き・思い
カテゴリ2:自分自身の偏見や誤解の自覚
カテゴリ3:社会の現状,偏見や差別の認識とどのような社会になってほしいか
カテゴリ4:問題解決の方法
カテゴリ5:医療者としての学び
という5つのカテゴリが見出されていました。
医学教育における意義と課題

この研究から分かるのは、医学教育において「性的マイノリティ」を学ぶことが、単なる知識習得にとどまらず、学生の意識や姿勢を変える大きな契機になっているということです。特に、医療者が持つべき「患者に寄り添う姿勢」や「社会的な視点」を育む上で、このような講義は重要な役割を果たしているといえます。
一方で、学生の中には「まだ理解が追いつかない」「実際の現場でどのように対応すればよいのか具体的には分からない」といった声もあったようです。つまり、1回の講義で全てを学ぶのは難しく、継続的な教育や実践的なトレーニングが求められることも示唆されています。
性的マイノリティの医療について学ぶ機会の必要性
筆者らは研究結果を受け、「医学科1 年生の性的マイノリティに対する知識は十分ではなく、自分たちの周囲にも悩みを抱えながら生活している性的マイノリティの人がいることを初めて認識する学生が多かった。授業を受けることで性的マイノリティに対する認識が変わり、偏見をなくしたいと記載する学生がいる一方、率直な気持ちとして、同性愛に対する抵抗や偏見をなくすことは難しいと書いた学生もいた。学生たちは偏見や差別のない社会を作る必要性を記載していたが、どうすればそのような変革ができるのかを考えた記載は少なかった。」とまとめています。その上で、性的マイノリティの人々が求める医療について具体的に学べる機会の必要性を、著者らは指摘しています。
まとめ:性的マイノリティへの理解を深める第一歩として
青木昭子氏らの研究は、医学生が「性的マイノリティ」というテーマにどのように向き合い、どのように学びを深めていくのかを示した貴重なものです。
この研究を通じて明らかになったのは、多くの学生が講義を通じて新たな視点を得て、性的マイノリティへの理解を深めるきっかけになっているということです。これは、医療者としてだけでなく、一人の人間としても大切な学びであると言えるでしょう。
医療者だけでなく私たち一人一人がこうした知識を持ち、多様な価値観や性癖、そして様々な経験の方々に対してフラットな視点と態度を共有することで、これからの世の中ではより個人の事情に合った医療が提供されるでしょう。
協力:SM Academy
監修:Dr.N https://x.com/SM_Dr_N
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