女王様でも痴女でもない、S女という存在。サディストの性質を持つ女性のことを指す言葉ですが、その性質を深く理解している人は意外と多くありません。
「S女ってそもそもどんな人?」「痴女や女王様と何が違うの?」「どんなM男が好き?」など、S女のリアルな声を聞くべく、Luna編集部は現役S女3人の座談会を実施。S女の本質やあるあるをお伺いします。
幼少期? 風俗店で? S女に目覚めたきっかけは三者三様!
――本日はお集まりいただきありがとうございます! 早速ですが、みなさんが「S女」になったきっかけを教えてください。
あやね:S性へのめざめのきっかけは、年の離れた弟の存在です。4歳差だったので、子どもの頃は言語のコミュニケーションがなかなかうまくいかなくて。弟に言うことを聞かすためにはどうしたら良いかって考えた時に、暴力しかないなって思ったんです。そこから、人を暴力でコントロールできることに気付きました。
――子ども時代にはすでに、S女の片鱗があったんですね。
あやね:そうですね。「俺様系の少女漫画に全くときめかないな」「俺様王子の意味がぜんぜんわからない、むしろ嫌だな」っていう思いもずっとあって。そんななか、17歳で始めた芸能活動の経験が、自分のS性に拍車をかけました。写真の被写体などをやっていたんですが、撮影中って周りの大人たちがちやほやしてくれるんですよね。そのちやほやに慣れちゃったんです。ここで「自分は確実にS女だな」って自覚しました。
ゆりな:私はそもそもスイッチャーなんですが、自身の嗜好性は風俗嬢としての経験のなかで目覚めました。もともとM嬢として働いていた風俗店から「S嬢をやってくれ」と頼まれたのがきっかけです。でもだんだんどちらも面白くなってきて、S性とM性が自分の中に共存するようになりました。気付いたらSMにハマってたんです。ノーマルの恋愛や、ノーマルの性交渉にはあまり興味が湧かなかったんですよ。
――なぜ最初はS嬢ではなくM嬢として働き始めたのでしょうか?
ゆりな:M側は、最悪マグロでもプレイが進みますが、S側はしっかり自分で内容を組み立てて、相手をリードしていかないといけませんよね。仕事としてやる際は特に、S側は経験や技術が必要だったので、最初はM嬢として様子をうかがっていました。
当時はパターンやマニュアルがなくて、お店も私もお客さんも、みんな手探りでSMをやっていたんです。お手本も何もほとんどなかった時代ですから「こうやったら気持ち良いんじゃないかな」と自分なりに試行錯誤しましたし、お客さんにも「どんな風にされたいですか?」って丁寧に聞くことも欠かさずプレイしていました。その経験もあって、自分が一方的になにかをするよりは、相手の望むことをしている方が満足できるようなS性になったんだと思います。
――ねるさんも、今は風俗店勤務とお伺いしました。S女になったきっかけについていかがでしょうか。
ねる:私はいわゆる「M性感」と呼ばれるお店に弟子入りしていました。昔、セックスで傷付いた経験があって「どうすれば自分が傷付かずにセックスができるのかな」ってすごく考えたんです。その時に「S女だったら傷付きにくいかも」と思って。そこから、傷付かないための技術を身に着けようと勉強してたら、どんどん面白くなっていって、今に至ります。今ではとても楽しくプレイができています!
――お二方とも、お店で経験を積んできたんですね。
あやね:風俗店での勤務経験がないのは、このなかで私だけでしたね。私は誰に習うこともなく、ずっと感覚でやってきました。もともと器具を使わない派で、全部自分の手でプレイをしていたので、テクニックを教わる必要もあまりなくて。手だと、痛みを相手と共有できるのが良いんです。自分の体温をそのまま伝えられるので、好きなんですよ。
ねる:みなさん、全然違うエピソードで三者三様で面白いですね!
S女って勘違いされがち! 現役S女が語るその実態
――女王様などと違い、S女という存在はあまり想像しにくいと感じます。S女に対する誤解や、勘違いなどを見聞きした経験はありますか?
あやね:私はS女であることをどこでも公言しているのですが、その際に「暴力的なのかな」「性格悪そう」 と引かれることはよくあります。怖い人なんじゃないかって思われちゃうんで、そのときはちゃんと説明しています。Sは性癖じゃなくて生き様だからって。
ゆりな:カッコいい!
ねる:私はよく「S女ってヤリマンでしょ?」って言われますね。もちろん、ある程度そういう要素がある人もいますけど、セックスに積極的な女性= S女ではないかな。どちらかというとそれは「痴女」だと思います。でも痴女も、一朝一夕でなれるものではないですし、女性全体のなかではかなり少ないほうだと思います。男性の幻想に近いですね。
――S女=怖い、叩かれそう、セックスに積極的といった、安直なイメージはどうしても持たれてしまいがちですよね。
あやね:セックスの話でいうと、実は私、挿入未経験の処女なんですよ。誰かに舐められるのも嫌で。自分のことを「姫」だと思っているので、そんな汚らわしいものを突っ込むとか意味がわからないんですよね(笑)。これはかなり珍しいタイプだとは思いますが。
ゆりな:S女ってひとくくりに言っても、みーんな違うんですよね。お話を聞いていると、この3人の中ですらぜんぜん違う。30人いたら、きっと30人みんな違いますよ。日常的にSっ気を出す人もいれば、普段は大人しくてプレイの時だけS、という人もいます。プレイ中のSっ気の出し方も、暴力的な人もいれば、快楽責めを好む人もいる。これらは一例ですが、「S女ってこうでしょ?」という考えを持っている人は、それ自体が勘違いだと思います。
M男はトーク力が大事! 好印象・悪印象な男性の特徴は?
――普段はM男とプレイすることが多いと伺いました。みなさんはどこでM男と出会っていますか?
ねる:私はマッチングアプリが多いですね。
ゆりな:緊縛をするので、縄会の場でプレイ相手を出会うこともありますが、私も基本はマッチングアプリですね。SM特化のマッチングアプリは今のところLunaしかないので、愛用しています。周りのSM愛好者も、Lunaでパートナーを見つけた人は多いですよ。
あやね:私もLunaユーザーです! 昔は掲示板や別のマッチングアプリなんかも使っていましたが、自分にはどうしても合わなかったんですよね。これだけマッチングアプリが乱立しているなら、SM系アプリもあるかなと思って検索してみたら、ドンピシャのLunaが見つかって。すぐに始めました。
――みなさん、マッチングアプリを活用されているんですね。アプリにはたくさんM男がいると思いますが、どんな基準でM男を選んでいますか? 好印象・悪印象なM男の特徴があれば教えてください。
あやね:私はもう、かなりの面食いです(笑)。なので、顔写真をすぐに提出できない人は論外。とにかく顔で選びます。それにプラスで、 私のことをどれだけ崇拝するかも重要視します。従順で、顔が良いヤツ。これが私の好みです。
ゆりな:私は逆に、老若男女も外見もこだわりません。どんな人でもOKです。私が男性から女性に性別移行しているのもあるかもしれませんが、普段のお相手は女装さんが多いかもしれません。とにかく、ストライクゾーンがすごく広いんですよね。
ねる:メッセージのやり取りのなかで、性癖の話をしない人が良いです(笑)。性癖特化アプリなのにって思うかもしれませんが、私は性癖以前に、相手の人間性や人としての相性などを大事にしたいなって。夜の相性って、昼の相性の延長でしかないと思ってるんですよ。日常から前戯は始まっていると思っていてほしいです。
あやね:わかります! 逆に私が大嫌いなのは、メッセージのやり取りが上手くできない人。特に、一問一答みたいな会話をする人や、敬語を使えない人は嫌ですね。「ご出身どこなんですか?」「 京都!」で終わり、みたいな。コミュニケーションを全部私にやってもらおうって思ってる人は、めちゃくちゃ嫌いです。マッチングアプリだと、意外に多いんですよね。
ゆりな:たしかに、よく見かけますね。私の経験から話すと、やり取りのなかでセックス願望が透けて見える男性は引いちゃいますね。ずっとSMの話をしていたのに、最後にやんわりセックスをほのめかされると「最終目的は結局それなんだ……」と思ってしまいます。「私はそういったことには応えられません」とお伝えすると、ふっとお相手からの連絡がなくなっちゃったりも。そういった一部の男性は、少し嫌かも。
ねる:あとは、性癖を偽る人がたまにいるんですよ。とりあえずSMプレイっぽいことを無料でやってみたいから、とりあえずMって言っとこう、みたいな。そういう人に限って「俺、S性もあるんだよね」とか言い出す。ちょっとイラッとしますね(笑)。
ゆりな:わかります、たまにいますよね。
ねる:対女性のやり取りは、どれだけ不快感をなくせるかが大事。男性の皆さんにはぜひ覚えておいてほしいです。というか、不快なやり取りをする人が少なくない状況なので、戦略的にコミュニケーションを取ることができれば、すぐに勝てるようになると思いますよ。
迷えるSMerへ、S女たちからのメッセージ
――なかなかS女と出会えないM男や、もしかしたら自分はS女かも?と悩む女性も少なくありません。そんな迷えるSMerたちに伝えたいことはありますか?
あやね:M男には「タメ口使うな」。今日はこれが伝わればOKです。女性には「S女」を名乗ることに対して、あんまり気負わなくても大丈夫と伝えたいです。どうしても女王様的なイメージが拭えずに「技術や知識がないから無理かも」「ちゃんとS女として振る舞えそうにない」みたいに思ってしまう人もいます。
でも、私は女王様ではなく「姫系S女」と名乗っていて、わがまま言いたい!もっと可愛いって言われたい!ちやほやされたい!って感覚を持っているんです。そのくらいの人でも、Lunaで満足できるんじゃないかな。「誰かに大切にされたい」という思いだけでもあれば、この世界に飛び込んでみてほしいです。
ゆりな:はじめにも言いましたが、S女といっても色んな人がいます。M男に限らず、S女自身も「S女とはこうだ」と決めてかからないようにしてほしいですね。あやねさんが言っていた通り、どうしてもS女の固定観念が抜けずにハードルを上げてしまっている人が多いような気がして。そうではなくて、相手に敬意を持ちつつ、自分のやってみたいことを素直にやってみる。それがその人のS性ですから、あまり色々なことに縛られず、S女のハードルを下げていくのが良いと思います。
ねる:どんな嗜好を持つ人でも、S女と関わる人はみな「NO」を言える勇気を持っておいてほしいです。たまに、S女に好き勝手やられて傷付いている人を見かけるんですよね。嫌なことは嫌とはっきり言う。Mだからって、なんでも言うことを聞かないといけないわけではありませんから。そんな怖いこと言ってますが、SMはやっぱりアットホームで温かい界隈です。距離感も近いですし、結構すぐに仲良くなれますよ。なにかわからないことがあれば、みんな教えてくれます。少し興味があれば、ふらっと遊びに来てください。怖そうに見えて、案外楽しい時間を過ごせますよ。
――S女の理解が深まった座談会でした。本日はありがとうございました!
S女に対する先入観を捨て、フラットに接してほしい
S女と呼ばれる人たちは、あまり身近な存在ではないがゆえに、勝手なイメージを作り上げられてしまうことが少なくありません。
しかし「S女」はあくまでもその人の要素の一つ。日常の性格や考え方はもちろん、S性も千差万別です。S女に対する先入観や思い込みは一度捨てて、対面したS女のパーソナルな部分に目を向けてみてください。